神仏を尊び、神仏を頼まず |
宮本武蔵の書き残した二十一行からなる自戒、「独行道」の十九行目 仏神は貴し仏神をたのまず が出典。 今は神仏のほうがピンと来るので表題のほうが耳に心地よい。 枕に「神仏を尊び」が来るとは知らなかったが、納得。 高専の三年生の時、学業を放棄して試験期間中も本ばっかり読んでいた。 吉川英治の宮本武蔵では確か一乗寺下り松の吉岡一門との決闘の際、通りがかりのお地蔵さんだったか、お宮さんだったかに手を合わそうとして思いとどまったと記憶する。 ロシア文学なんかと比べると吉川英治の小説は行間が広くて筋が単純だから、斜め読みしてあっという間に全巻読破したので細かいところは覚えてない。 しかし、神仏を頼まずという武蔵の精神は長く私の人生の指針となった。 「自育不利人」というペンネームは北欧神話の英雄「ジークフリート」のもじりだけど、「自ら育ち人を利さず」と武蔵の精神を自分なりに噛み砕いて表現したつもり。 力のあった若い頃は縁起というものにことごとく逆らった。 おのれの力だけが信じられ、できないことは何もないとおごっていた。 今から振り返ると独力で生きてきたつもりが、多くの人に支えられてきただけだと知れる。 力の衰えた今だから人に支えられているのではなく、力のあった時代には気が付かなかっただけだ。 |