本社では部ごとに社員旅行に行っていました。 バスで行ける程度のものですが、ある年、建築設計部の行き先が富士五湖に決まりました。 宴会にはお約束のノド自慢があるわけですが、設備課の歌舞伎町専従班は一杯飲んで盛り上がったあげく、なにかブチかまそうと衆議一致しました。 出し物は当時はやったダウンタウン・ブギウギバンドのカッコマン・ブギとスモーキン・ブギがスリーコードで済むし簡単でよかろうと決まりました。 コスチュームの白い「つなぎ」はおりよく人事課三バカ娘にしてバレー部の影の部長、洋子の兄貴が自動車修理工場に働いているとのことで借りてきてもらうことにしました。 設計部にはバンド同好会があり、ノド自慢の伴奏をするため現地に楽器を持っていくので、便乗させてもらいました。 二週間前から練習をはじめ、当然練習後は歌舞伎町へ直帰する毎日でした。 バンド演奏は好評を博しましたが、たかが宴会余興のノド自慢にはやりすぎで、山崎の予想通り審査の対象にならず、一等賞の商品を狙っていたのに特別賞で終わってしまいました。 って、のど自慢に二曲も歌うかい、普通!! 演奏が終わってから聞いてしまった小堀設計部長と本田設計部次長兼設備課長の会話 小堀部長 : 達者な連中だねぇ。 本田課長 : ソツがありませんよ。仕事以外のことなら。 |
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メンバー紹介(順不同) |
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パート | 名前 | 職種など | 略歴 |
ドラムス | 北条 | 電気設備 一番年下 |
このメンバーの中では唯一歌舞伎町専従班には属さず、独自の道を行く。 若木係長の信頼がもっとも厚かった実力にもかかわらず、高卒と言うことで不当な待遇を受け、いつもブースカ言っていた。 仕方ないぜ、大企業は学歴で横並びにするしかないんだから。俺もよく似た境遇だったよ。 一緒に飲みに行くことは少なかったけど、ただ一人自分の車を持っていたし、よくつるんで遊んだので歌舞伎町専従班賛助会員にいれてやった。 消息筋の話では船津さんに歌舞伎町のトルコへ拉致され、筆降ろししたらしい. |
リードギター | 森 | 機械設備 同い年 |
北海道生まれなのでスキーは下駄のように使いこなす。 喧嘩っ早く、ちょっと目を離すとすぐあっちのほうで見知らぬ人にけんかを売っている。 幸い、趣味が違うのかあまり歌舞伎町では一緒にならなかった。同じボトルにぶら下がってはいたが。 顔はやくざも裸足で逃げる森がギターを弾くほど器用だとは思わなかった。 しかしクラシックギターじゃあるまいし、座らないと弾けないとは・・・。 リードギターは立って弾かなきゃカッコつかないぜ、ベイベー。 |
ベースギター | 山崎 | 機械設備 同い年 |
北海道生まれのくせにスキーはできない。 酒の量は私とどっこいどっこいで大して飲めないくせに飲みに行くのが好き。酔っても酔わなくても人格はたいして変わらない。 森の結婚式では絶妙の司会をしていた。商売を完全に間違えている。 吉本興業へでも行けよ。 学生の頃、ゲイバーでアルバイトしていたと言ううわさがあり、一度泊めてもらったときはなんかケツがこそばゆかった。 |
トランペット | 船津さん | 機械設備 最年長 |
このメンツでは一番年上。酒の量は底なしに近い。 尻が長いうえすぐハシゴするので市ヶ尾寮向けは終電がなくなってしまい、しょっちゅう立川のアパートに泊めてもらうことになった。 この人と同じプロジェクトに派遣されたのが運の尽きで、それまで清く貧しく美しく生きてきた私の人生を180度変えてしまった。 ダウンタウン・ブギウギバンドはトランペットなど使っていないけど、これっきゃできないので間奏に無理やりトランペットのパートを入れた。 |
バックコーラス | 佐塚 | 電気設備 年下 |
女たらししか能がないのでバンドでは手ぶら。 こいつが名古屋支店から転勤してきたとき、運悪く隣の席になり電話が共用だったので、捨てられた名古屋の女たちから掛かってくる電話を何度取らされたかわからない。 そのたび居留守の嘘をつかなければならず、心やさしい私はつらい思いをした。 ルックスが抜群なのでナンパの餌には欠かせなかったが、結局いつも一人でモテていた。 特におミズ相手には無敵を誇った。 妹二人は美人らしい。佐塚の妹なら多分そうだろう。 一度泊めてもらったとき尊顔を拝むチャンスがあったのだが、洗顔中でド近眼の眼鏡をはずしていたのでまったく見えず、目の保養にはならなかった。 残念無念。 当時高校生だった下の妹をとくにかわいがっていて、しょっちゅう自慢するので、 「そんなにいい娘なら俺の嫁にくれ。 上の妹は船津さんにやることにして合同結婚式をしたら安くつくぞ。」 と理路整然、礼を尽くして説得したのだが、 「ダメダメ。オトさんにやるくらいなら俺が妹と結婚する。」 ときっぱり、かつ怪しげに断わられた。人のこと、よく言うよ。 |
・・・・・・バカばっかり (-_-;) |