軽井沢の別荘にて
ほんの近くに君はいた
腕をめぐらせるならば
抱きしめることができるくらいに
君の声をこんなに近くに聞き
君の瞳を
これほどつぶさに見たことはなかったのだ
けれど二人の間に冷たく固く
無限に広がるガラスの存在を
僕は ――あるいは君も―― 直感していた
目には映らぬ薄いガラスであった
なおかつ広島と東京の間より
二人を隔てるガラスであった
S48.10.11