寮でインキンタムシが流行したことがあります。 風呂で伝染するという話もありますが、定かではありません。 なにやら怪しげな薬で湯船のお湯を真っ白にしていたときもあります。 問題はその痒さです。とても辛抱できるような生易しいものではありません。 対策として学校が用意したのはタムシチンキでした。 ヨードチンキのようなもんでした。 空いていた12人部屋の寮室を一つ、タムシ治療専用室として使用し、いくつかタムシチンキの入れ物が置いてありました。 タムシチンキを患部に塗るときは二人一組を原則としました。 ただし、塗ってもらうわけではありません。もう一人はうちわを持つのです。 インキンタムシはフクロには感染しないとされ、ちょうど境界ぎりぎりの部分の内股にタムシチンキを塗るのですが、非常に刺激が強くて塗ったらすぐに強制空冷しないと悶絶してしまうのです。 誤ってフクロのほうにでもチンキがつこうものならタマを押えて床を転がりまわる地獄絵となりました。 死ぬ思いでタムシチンキを塗ったあとは盛大に皮が剥けましたが、効果はその割ではなく、何度塗っても直りません。 結局薬局へ行って何種類かの抗真菌剤を買ってきてやっと直すことが出来ました。 インキンタムシに使う、とは恥ずかしくて言えないので、水虫に塗る、と偽って買うのでした。 サトーのベチック軟膏は全然効かず、竹田のなんとかいう透明な軟膏で完治しました。 何で効かなかった薬のほうの名前を覚えているのだろう。 |