小学校へ通うようになった私はぼんやり自分の世界に浸ることが多かったのか、よく先生の話を聞き漏らしたようです。 ガリ版刷りの宿題のプリントを持ち帰るのを忘れると人のせいみたいに泣いたりするのですが、おふくろは決まって路地をはさんで今町側にある坂下の店に連れて行きました。 坂下には同級生の藤抜秀夫の一家が間借りしていました。 藤抜のお母さんが坂下の娘だったそうです。 藤抜はまじめで、必ず宿題は持ち帰っていましたので、おふくろは坂下のショーケースのガラスと照明を利用してプリントの上に紙を重ねて宿題を書き写すのでした。 こんなに苦労をしたにもかかわらず、小学校一年生のの通信簿には「宿題はほとんど忘れます」という寺脇先生のコメントが残っています。 宿題が出たこと自体忘れたのでしょう。(^^;) |