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.2005.08.29

五歳になるちょっと前、母方のおじいさんが危篤になったとき、両親に連れられて初めて宮崎に行きました。
暇を持て余してぐずる私をごまかすため、おふくろの妹、叔母さんたちが弁慶蟹という小さな蟹の取り方を教えてくれました。
石垣の隙間の奥に蟹の足が見えたら、別の隙間から細い棒を蟹より奥に届くように差し込んで追い出すのです。

それから数年、若山川のそばに引っ越したのですが、自宅裏の土手にも蟹が住んでいることに気がつきました。
宮崎では石垣の隙間にいた蟹が、若山川では土手にあちこち穴をあけて巣にしているのです。
やりかたは似たようなもので、蟹の足が穴の奥に見えたら、やっぱり細い棒を穴の横から蟹を追い出すようにつっこむのです。

小学校へ行くようになり、絵日記を書かされましたが、ずぼらな私はすぐに忘れて書かないことが多く、よく叱られました。

あるときまだ書いてない日の日記を書いてきなさい、と先生に叱られ、どのページも

「きょうは かにをとった。」

と書いて埋めて、それじゃあんまり寂しいので二、三ページ置きに蟹の絵など書いていたのですが、どうせ毎日取るのだから、と一週間分ほど先まで書いて提出し、またまた先生に叱られました。



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自育不利人の たそがれ懐古録