船場トンネルが貫通しました。 短いトンネルなので反対側からは掘り進まず、片側からだけ掘りましたので出口側の山腹に穴が開いたのです。 貫通のときのズリ(発破で砕けた岩のこと)は安産のお守りになるというので5、6個確保しておきました。 トンネルが貫通すると方々のお偉いさんを招待して貫通式が行なわれます。 よくニュースに出る、えらい人が最後の発破のスイッチを入れるやつです。 最後の発破で貫通しないと大変なので貫通した穴をまた岩を積んで塞いでおくのです。 そして少量の発破を掛けるのですが、じつは発破は発破士という資格が必要で、えらいさんが入れるスイッチは形だけ、陰で発破士がほんとのスイッチを入れます。 貫通式には鏡割りがつきものですが、酒樽の蓋もそう簡単には開きません。 これも前もって開けておきます。 鏡割りのあと、小さな桝で酒を酌み交わすのですが、四斗もある酒をつまみもなしに飲みきれるわけがありません。 あんまりもったいないのでもう一人の若い土木職員と全長290mを籠かきのようにして担いできたのですが、足元も悪いので大揺れに揺れて中味はほとんどこぼれてしまいました。 貫通式のあと二、三日たった夜のことでした。出口側の山肌が崩れて道路を塞いでしまいました。 誰か通っていたらえらいことになるところでしたが、夜中に走る車などない道でした。 駐在さんが事務所に来たので叱られるのかと思ったら 「掘る手間が減ってよかったですね。」 のんきな時代でした。 |